漁師の年収はいくら?漁法別の平均と手取りの実態を解説

キーワード: 漁師 年収

漁師の年収はひとつではない|漁法で5倍以上の差

「漁師の年収」と一口に言っても、遠洋マグロ延縄漁と沿岸の定置網漁では年収水準が大きく異なります。業界データをまとめた集計では、遠洋マグロ延縄漁が年収600〜1,300万円、遠洋カツオ一本釣りが500〜1,200万円と高水準な一方、沿岸定置網漁は180〜450万円程度とされています。

また、農林水産省の漁業経営調査(2023年)では沿岸漁家の平均漁労所得は約413万円とされ、同じ「漁師」でも働き方によって収入の幅が大きいことがわかります。

  • 遠洋・沖合の大型漁業は高収入だが拘束期間が長い
  • 沿岸・養殖は日帰り中心で家庭と両立しやすいが年収は控えめ
  • 自営(個人経営)か雇用(漁業会社の社員)かで収入構造が根本的に違う

漁法別の年収レンジ早見表

以下は業界各社の公開データや漁業求人情報をもとに整理された、漁労所得(経費差引後)ベースの年収レンジです。役職・経験年数・地域・漁獲状況によって実際の金額は変動します。

  • 遠洋マグロ延縄漁:600〜1,300万円(1航海1〜2年)
  • 遠洋カツオ一本釣り:500〜1,200万円(1航海3〜10か月)
  • 沖合底引き網漁:400〜750万円(日帰り〜数日)
  • 海面養殖業(雇用型):350〜800万円(通年・日帰り)
  • 沖合巻き網漁:350〜700万円(数日〜2週間)
  • 沿岸延縄漁:250〜500万円(日帰り)
  • 沿岸定置網漁:180〜450万円(日帰り)

政府調査でみる漁船乗組員の月額報酬

農林水産省の「漁船乗組員労働報酬実態調査」では、主要漁業の乗組員1人1か月あたりの平均報酬(持代1.0基準)がまとめられています。大中型まき網漁業は漁ろう船全国平均で約62万3,000円、沖合底びき網漁業も約62万3,000円、かつお一本釣漁業は約68万円、まぐろはえ縄漁業は約50万5,000円となっています。

国土交通省の船員労働統計調査でも、漁ろう船の職種別・漁業種類別に基本給や最低保障額、持代(歩)数などのデータが2022年以降公開されており、公的統計から報酬実態を確認できます。

  • 大中型まき網:月約62.3万円
  • 沖合底びき網:月約62.3万円
  • かつお一本釣:月約68万円
  • まぐろはえ縄:月約50.5万円

歩合制が主流|同じ船でも報酬が変わる理由

漁業の報酬体系には「全歩合給制」「固定給制」「固定給と歩合給の併用制」の3種類があり、多くの漁業で併用制が主流です。漁獲量や魚価に応じて報酬が変動するため、月収は安定しにくい構造です。

沖合底びき網漁業の例では、全歩合給の乗組員の平均報酬が約79万5,000円であるのに対し、固定給のみの場合は約46万2,000円と、報酬体系によって30万円以上の差が生じています。成果と報酬が直結しやすいのが漁師という仕事の特徴です。

  • 全歩合給:豊漁年は大きく増えるが不漁年は落ち込む
  • 固定給:安定するが天井は低め
  • 併用制:安定と成果のバランス型で最も一般的

「水揚げ金額」と「手取り」は別物|経費率に注意

漁師の年収として紹介される数字の多くは水揚げ金額(売上)であり、ここから燃料費、氷代、餌代、漁具の修繕費、漁協手数料(売上の5〜10%程度)などが差し引かれます。差し引き後の漁労所得が「本当の手取り」に近い数字です。

調査では、水揚げ高に対して報酬に充てられる割合は沖合底びき網で約24〜25%、かつお一本釣で約22%、まぐろはえ縄で約20%とされています。沿岸漁船漁業では売上の30〜60%が経費として消えることもあり、額面だけで判断すると誤解が生じます。

  • 売上ベースの年収1,000万円でも手取りは大きく下がる可能性がある
  • 漁協手数料は売上の5〜10%が目安
  • 燃油価格や魚価の変動が収入に直結する

外国人・女性船員の報酬と担い手の多様化

調査には外国人船員のデータも含まれています。まぐろはえ縄漁業では外国人乗組員が1,731人にのぼり、1人1か月平均約13万3,000〜13万7,000円が支払われています。一方、さんま棒受網漁業の外国人乗組員は月平均約25万2,000円と比較的高い水準です。

女性船員は対象が5人と少数ですが、1人1か月平均報酬は約26万円(いか釣約20万8,000円、その他約33万9,000円)と報告されています。漁業への女性参入はまだ途上であるものの、現場で活躍する事例は存在します。

  • まぐろはえ縄の外国人乗組員:月約13.3〜13.7万円
  • さんま棒受網の外国人乗組員:月約25.2万円
  • 女性船員:少数だが月約26万円の報告例

一般労働者の平均年収との比較

厚生労働省の令和7年(2025年)賃金構造基本統計調査によると、一般労働者(短時間労働者以外の常用労働者)の所定内給与は男女計で月34万600円、単純な年収換算では約490万円が目安です。男性は月37万3,400円、女性は月28万5,900円で、男女間賃金格差(男=100)は76.6となっています。

ただし、この調査の対象産業に漁業は含まれていないため、漁師と一般労働者の年収を直接比較することはできません。漁師の収入は歩合制や経費負担の影響を強く受け、月収が20〜80万円超まで変動しうる点が一般的な会社員との大きな違いです。

  • 一般労働者・男女計:月34.06万円(年収換算約490万円)
  • 男性:月37.34万円/女性:月28.59万円
  • 漁師は歩合制と経費負担のため単純比較は難しい

未経験から漁師を目指すときの考え方

漁師には漁業権が必要な自営の世界と、漁業会社に就職して乗組員から始めるルートがあります。未経験歓迎の求人も多く、定置網や海面養殖は日帰り操業が中心で生活リズムを保ちやすい傾向があります。

遠洋漁業は年収の上限が高い反面、1航海が数か月〜1年以上に及ぶこともあり、家族との時間が取りにくくなります。収入だけでなく、拘束期間・船酔い・体力面・地域への移住なども含めて判断するのが現実的です。

  • 未経験者向け求人は沿岸・養殖・定置網に多い
  • 遠洋は高収入だが長期乗船が前提
  • 自営は天井が高い代わりに不漁リスクを自分で負う

この記事のポイント

  • 漁師の年収は漁法で5倍以上の差があり、遠洋マグロ延縄600〜1,300万円、沿岸定置網180〜450万円が目安
  • 沿岸漁家の平均漁労所得は約413万円(2023年)
  • 政府調査の月額報酬はまき網・底びき網約62万円、かつお一本釣約68万円、まぐろはえ縄約50.5万円
  • 歩合制が主流で、報酬体系により月30万円以上の差が出る例もある
  • 年収の数字は水揚げ金額ベースが多く、経費を引いた漁労所得が実態に近い
  • 一般労働者の年収換算約490万円とは単純比較できない点に注意

参考情報

← 記事一覧へ · 記事を検索 · 年収指数を見る · トピック一覧